アメリカン ルアーフィッシング入門!
「ポップRがくれた輝かしい業績!」マーク・ヒックス2018年5月号 Vol.131
僅か1/4オンス(7g)のREBEL(レーベル)「ポップR」は、バスフィッシングの歴史の中で間違いなく最もストーリーに満ちたルアーだと言えるだろう。皮肉にも、このルアーが発売されてから2年を少し過ぎた1978年に一度廃版になっている。この「ポップR」のルアー生命が失われかけようとした運命を劇的に変えたのがリック・クランだった。その当時リック・クランはトーナメントでの賞金だけでは生活ができないのでトレドベンドでのバスガイドによる収入が不可欠だった。ある日クランがガイドをした一人の客は、頑固な若者でロッドに「ポップR」を結んでいた。クランはその客にディープのブラシパイルを釣るためにワームのテキサスリグでの釣りを勧めた。ところが、若い客は彼のアドバイスを無視し、水面直下に沈んだ灌木の上に「ポップR」を投げつけ、ありえない速さで巻き取ったのだ。クランは黙ってみていたが、その客は、そのバカげたやり方に飽きたのか今度は普通に巻き取りはじめた時に、かなりなデカバスがルアーを飲み込んだのだ。そして、次の一投でもデカバスが「ポップR」を吸い込んだのだ。まぐれだろうと信じたいものの、クランはショックで頭が真っ白になった。同じ光景を何度も、何度も、何度も、何度も見た時に、クランはこの若い客が全く新しく、そして最強の釣法を教えてくれたのだと悟ったのだ。
この出来事があったすぐ後に、テキサス東部のアンズ・タックルがPRADCO(プラドコ)に「ポップR」の注文をし始めた。この時の注文は、特別注文ができる最小ロッドの144ダース(1728個)だった。アンズ・タックルに「ポップR」が入荷した時、一握りのバスプロだけが密かにルアーを手にした。この時に「ポップR」を手に入れたバスプロには、リック・クラン、ボビー・マーレー、トミー・マーチン、そしてゼル・ローランドが含まれていた。
「我々がツアーで移動している時に、タックルショップで「ポップR」を見つければ全て買っていた。」とゼル・ローランドは言っている。何十万ドル以上もの賞金を、この小さな「ポップR」が稼ぎ出している間のおよそ10年近く、「ポップR」の秘密はテキサスのこれらのバスプロ達によってしっかりと守られていた。このようなことが可能だったのは、インターネットやソーシャルメディアがなく、そしてカメラがプロ達に今ほど焦点を当てる前の時代だったからこそである。今の時代はシークレット・ルアーをそんなに長く秘密にしておくことは不可能だ。
ゼル・ローランドは、1986年に行われたチャタノーガでのB.A.S.S.スーパー・インビテーショナルにおいて「ポップR」で優勝した時に、ウイニングルアーの秘密をついにうっかり漏らしてしまった。PRADCO(プラドコ)は、すぐに「ポップR」の驚異的な注文に押しつぶされそうになり、ローランドの名前は瞬く間に「ポップR」の代名詞になった。「嘘を付かずに秘密を守りながらウイニングルアーを隠し通すのは本当に難しかった。私はウソは付きたくなかった。」とローランドは言っている。
それから7~8年後、ローランドは「ポップR」のプラスチックボディー表面をサンドブラストして、ボディーを薄くした改良型の「ポップR」を作った。ポッパーを水中に浮かべた時、テールダウンが起こることによって、よりチャギングあるいはスピッティングしやすくするためだった。「もしチャギングさせたかったら、ロッドチップを下げてアクションさせる。もしスピッティングさせたかったら、ロッドチップを上げてアクションさせればいい。スピッティングもチャギングも両方できるポッパーはこれだけだった。」とローランドは説明している。リトリーブ中にコンスタントにスピッティングするポッパーを望むアングラー達を満足させるために、彼はPRADCO(プラドコ)のXCAIBUR(エクスキャリバー)のラインアップに「ゼル・ポップ」をデザインした。
「ゼル・ポップ」は、現在PRADCO(プラドコ)のBooyah(ブーヤー)のラインアップになっており、「ボス・ポップ」という名前に変わった。1/4オンス(7g)と3/8オンス(10g)がラインアップされている。「ポップR」のルアーコンセプトと同じようなポッパーが、現在数えきれないほどのメーカーから発売されているが、おおむねよく釣れるルアーとなっている。
南カリフォルニアのB.A.S.S.マスター・エリートシリーズプロであり、クラシック・チャンピオンでもあるケーシー・アシュレーは多くの様々なポッパーを試したけども、今はただ1/4オンスの「ゼル・ポップ」しか使わないと言っている。「「ゼル・ポップ」は汎用性が高く、ファスト・ムービングとして使うのが好きだ。他のポッパーでは、「ゼル・ポップ」には遠く及ばない。」とハードルアーのスポンサーを持たないアシュレーさえもそう言っている。彼は、「ゼル・ポップ」についている#6フックを外してストックしておき、少し大きめの#4フックに付け替えて使うことが多い。このチューニングだとポッパーのウエイトを落とさずに、さらにアクションの邪魔にもならない。」と言っている。「私は水温が70℉(21℃)か暖かい時は、いつもボートデッキに「ゼル・ポップ」を準備しておく。少なくとも「ゼル・ポップ」で一日に1匹も釣れないトーナメントは経験したことがない。」とアシュレーはこうも言っている。
「プランク」は悪ふざけではない!
Booyah(ブーヤー)から出ているゼル・ローランドの「プランク」クランキング・ポッパーは、ローランドが発明した最も新しいルアーだ。5/16オンス(8.8g)のフェザー付きポッパーで、スクエアタイプのリップをつけている。ローランドは「ポップR」のようなポッパーでありながら、ステディーリトリーブではMann’s(マンズ)の「ワン・マイナス」に似た泳ぎをすると説明している。彼は「プランク」は悪いルアーで、もしバスが「プランク」にミスバイトしたなら、私はルアーをすぐに回収して同じ場所に投げる。そして1~2回ポップさせ、次にリトリーブして今度はジャークベイトのようにトウィッチングするのだ。そうすると、おおかたのバスは食いついてくる。