「月齢と釣果、スポーニングの関係 」
2015年11月号Vol.62
DR.ハル・シャラム:ミシシッピー州立大学野生生物・水産・養殖学部水産学科教授。バスに関する研究・著書が多数。
【釣果との関係】
ほとんどのアングラーは、月齢と釣果の関係についてそれぞれの意見を持っている。多くは自分の経験からくるものだが根拠はかなり疑わしい。ほとんどのアングラーは、満月が釣果に影響すると言うが新月の方がよく釣れるというアングラーもいる。
アメリカにいる2000万人のアングラーは皆、月の満ち欠けについて関心がありその影響を信じている。混乱を避けるために、とりあえず日中の釣りとナイトフィッシングを分けて考えるとよい。ナイトフィッシャーマンほど月齢を気にするアングラーはいないだろう。
そもそも夜釣りは日中の釣りより難しく、満月の雲のない澄み切った夜は、釣りのポイントを確認しやすくする月明かりが有利に働く。確かに20年前は、このような月明かりが重要だったかもしれないが、現在の我々はGPSも持っている。
しかし、満月の夜がナイトフィッシングに向いていることは間違いない事実だ。もちろん、新月が好きなアングラーにしてみればこのようなことは何の意味もないだろう。他方、日中釣りをするアングラーにとって、今日が満月なのかあるいは別の月齢なのかは判断しにくいが、夜釣りのように釣り場が見にくいわけでないので、自分の過去の経験則から月齢に対する印象が決まってきているように見受けられる。
月、あるいはもっと細かな月の満ち欠けがバスの行動に影響を及ぼしているようにも思える。月は潮の干満に大きく影響し、潮の干満が魚の行動に影響している。グラシャン(カリフォルニアに生息するイワシ科の魚)のダイナミックなスポーニングは、月の影響を受けた潮の干満を利用し南カリフォルニアの海岸線に絶妙な高さで卵を産み付ける。また、タイダルリバーのバスは、水位が下がるタイミングには今まで捕食していた湿地から、そこから連なる水路へと移動する。一方、内陸部のフィールドには水位の干満がない。
多くのアングラーの対象となる内陸部にある水域のバスに月の影響はあるのだろうか。結論から言うと、ラージマウスバスやスモールマウスバスの行動に対する多くの研究に、バスの行動に科学的、かつ直接的な月の影響があるという証拠はないということが言える。
バスには、好みの生息域があり、セレクティブに活動域を選択し、シーズナルな要素だけでなく日中と夜間の差でさえ居場所をかえることが多くの研究からわかっている。研究の中には月の影響についてのものもあるが、バスの行動との因果関係は証明されていない。さらに、バスの行動に関する研究では、バスの行動からバスの捕食行動を推定することができるが、月とバスの行動や釣果との関係は明らかにされていない。
このように、釣果と月齢との間に明らかな相関関係を見出すことができない一方、少なくとも、日中の釣りに関しては、月齢と釣果との間には何ら関連性がないという明確な証拠が示されている。早春から晩秋にかけて毎週のようにハイスキルのアングラーが出場している北部のバストーナメントでは、毎回のように上位入賞者はビッグフィッシュでリミットを揃えてくる。まるで、月齢を確認するカレンダーなど必要がないような釣果だ。
将来的にマニアックな統計学者がトーナメントと月の影響を集計し、何らかの影響を見つけ出すかもしれないが、その影響は微々たるものであることは断言できる。そもそも、月齢などの変化し、移ろいやすいものとの関係性は見つからないだろうと思われる。
【スポーニングとの関係】
バスアングラーは、バスのスポーニングと月齢との関係について強い先入観がある。
釣果と同じように多くのアングラーは、満月との関係性を強調している。一方で、新月との関係性を唱えるアングラーもいる。バスの孵化に携わる専門家たちは、月の特別な月齢とバスのスポーニング行動との間に強い傾向的な関係性の証拠は見いだせないと言っている。
図は、ミシシッピー州の野生動物・養殖協会の専門家とパークス北ミシシッピー孵化場の専門家が、野外の養殖池で行った調査データに基づいている。2013年と2014年の両年の調査でも月齢とバスのスポーニングとの間に相関関係がないことが示されている。