「ドクター・シュラムのバスの生態学(代謝について)」
*ドクター・シュラム:ハロルド・シュラム(ハル・シュラム)は、ミシシッピ州立大学野生生物・水産・養殖学部、水産学科教授。バスに関する研究著作多数。
バスの生態、その中でバスの代謝について書かれたものは多いが、例えば、冬の時期はバスの代謝速度が遅くなっているので、ファストムービングルアーは追わないだとか、低水温時にバスは頻繁には捕食をしないなどといったネガティブな意味でとらえられているものがほとんどだ。秋のバスの荒食いは、冬の生命維持のためだと聞いたことがあるだろう。この機会にそれらの説について根底から覆すような話をしていくつもりだ。バスの代謝について明らかにしていく前に、そもそも代謝とは何かを明確にしておく必要がある。いわゆる代謝とは、細胞レベルで営まれる生物が生きていく上で必要なエネルギーの獲得や消費、さらには生命維持に必要な細胞の合成などを指す。バスの代謝を理解することによって、釣りに役立つだけでなく釣った魚の命を守ることができるのだ。
【 代謝に関するいくつかの事実 】
1)バスは、生存不能とされる限界温度(98゜F / 43℃ )付近までは、水温の上昇に伴って代謝が上がるという事実がある。バスは変温動物であるため、バスの体温は周りの水温と同じ温度になるので、水温が高ければ高い程バスの代謝は活発になる。
2)活発に活動をすればするほど代謝が上がるので、じっとしているバスよりもエサを追いかけたり、ルアーに反応するバスは代謝が活発になっている。
3)代謝には酸素が不可欠なので、代謝が上がっているバスはより酸素を必要とする。以上の3点を考え合わせると、バスの行動が予測できる 。
【 フィーディング 】
アングラーの一般的な知識として、胃の中が空っぽになるとバスは捕食するということと、冬には消化の速度が遅いので一度に沢山は食べられないと言う説が有名だ。この説の半分は正しいと言えるだろう。消化は化学的なプロセスであり、全ての化学反応は温度に影響を受ける。そのため、冬のバスの消化は遅いと言われているのだ。しかしながら、実際は胃の中の食物の量がバスの食欲や飢えと関係しているとは言えない。飢えは、生命を維持していく上での糖と脂質のエネルギー循環における一つの反応であり、まるで生理的なサーモスタットのように設定された閾値を下回ることで捕食行動のスイッチが入る。バスがエネルギーを早く燃焼すれば(代謝が上がれば)するほど、設定された閾値をすぐに下回ってしまう。そして、バスは飢えを感じエサを探すことになる。80゜F(31℃)の水域に住むバスは、代謝が活発でエネルギーの燃焼も速い。そのため60゜F(18℃)の水域に住むバスより捕食行動が活発となる。しかし、注意しなければならないのは、たくさん捕食するということと頻回に捕食するということは同じではないということだ。すなわち、高カロリーの大きなエサを捕食すれば多くのエネルギーを得ることができるので頻繁に補食しなくて済む。そのような理由で、夏場は大き目のルアーがファーストチョイスとなり必要に応じてダウンサイジングすればよいと言える。ただ、何故夏の高水温時にバスのバイトがタフとなり、秋になると活発にバイトするのだろうか。この傾向については、代謝では全てが説明できない。先ず、夏のスローダウン(バスの反応や活性がスローダウンする)とはいったい何だろう。アメリカ北部のミシガン州やミネソタ州では真夏であってもバスは一日中捕食している。一方南部のアングラーの多くは、水温が85゜F(34.5℃)を越すとバスのバイトが中々得られないことを知っている。しかし、この現象はアングラーの多くが表水温とバスのバイトの関係を言ってはいるのだが、実はバイトが減った理由は、バスが水温が低めの別の場所にいることなどによって起きているのかもしれないのだ。それだけでなく、研究所に飼育しているバスは、水槽の中の温度が85゜F(34.5℃)ぐらいになるまでは特段変わりなく盛んに捕食する。活性が高いと代謝も上がりエネルギーを消耗する一方、活動性が低いとエネルギーの消費も下がり、結果として補食行動も不活発となる。色々な研究でも夏場にバスの活動性は減退していることが分かる。多くのフィールドでは、高水温を避ける様にバスがサーモクライン(変温層)の下層に潜んでいる。一方で、全てのフィールドにおいて高水温期はプランクトンやベイトが最も豊富な時期になるために、バスにとってこの時期はエネルギーを使わずとも補食が可能な環境だとも言える。水温が上がれば上がるほど代謝は上がり、より活動性の高いバスがエネルギーをより消耗する。バスは補食をしているが実際釣るのは難しく、またバスを見つけるのも難しいという時期なのだ。
【 バスの居場所 】
活動を抑えることはエネルギーの節約にもなる。バスは休息するエリアとフィーディングエリアを分けている。フロリダ州とジョージア州をまたぐレイク・セミノールで行った研究に、バスが沖にあるティンバーからフィーディングのためにショアライン近くのベジテーションへと移動したというものがある。代謝が盛んな夏にフィーディングのために移動をするバスは、冬の代謝が低い時には休息エリアにいると思われる。フィーディングエリアのバスは、より活性が高い。対称的に休息エリアにいるバスにはスローなアプローチが要求される。バスは、浮力を調節して活動性を落とした状態でエネルギー消耗をセーブしながら、あるレンジにサスペンドすることができる。ストラクチャーに寄り添ってサスペンドしている状態は、バスにとってはより深く薄暗い場所にある休息場と同じかもしれない。夏場の表水温より水温が低いサーモクライン下層は、バスにとって理想的な休息場となる。ただその場所にいるバスはフィーディングモードではないので、食性とは異なる誘いが有効となる。例えば、大き目のサイズでスロームービングなYUM(ヤム)のマネーミノーやベイトライクなワームをセットしたヤンブレラなどは効果的だ。
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